JBBY希望プロジェクト・学びの会報告(2019/10/5)

「動物、そして絵本が開く心の扉~少年院での実践から」

講師 大塚敦子氏(フォトジャーナリスト)、町田りん氏(学校図書館司書)

 10月5日(土)、出版クラブビルにおいて、本年度2回目の学びの会が開催されました。今回の講師は、希望プロジェクトのメンバーでもある、大塚敦子さん、町田りんさんのお二人です。

 最初に、さくまゆみこ会長の開会の挨拶。次に、講師お二人のお話に先立って、法務省矯正局少年矯正課長の小山定明さんから、少年院・少年鑑別所の現状――入院(所)者数の変化や、彼らの家庭・教育環境、社会復帰支援についてなどを、10分ほどご説明いただきました。

 大塚敦子さんは、画像を示しながら、ご自身が動物を介在したプログラムに関わる契機となったアメリカの女子刑務所の介助犬訓練から話を起こし、島根県浜田市の島根あさひ社会復帰促進センターにおける、日本初の動物介在プログラム「盲導犬パピー育成プログラム」(パピー=子犬のこと)、千葉県八街少年院の保護犬を訓練するGMaC(ジーマック=Give Me a Chanceの略)について紹介、少年たちが、訓練を通じて自己肯定感を育み、他者との関わり方を学んでいく過程を、具体的な例をもとにお話しいただきました。

 最近は、沖縄女子学園(女子少年院)の、犬の殺処分を減らす、犬の再訓練、社会に戻す「3Re―Smile(スリースマイル)プロジェクト」を取材、また、島根あさひ社会復帰促進センターで、絵本を活用した文章創作クラスを担当され、非言語的経験である犬の訓練を言語化できるかどうかで、その後のありようが変わってくるとの認識から、文章を書くこと、読み合うこと、訓練生(受刑者)自らが読み聞かせを行うことに取り組んでいるとのことです。

 町田りんさんからは、茨城農芸学院(少年院)の絵本読み聞かせについてお話いただきました。

 上智大学グリーフケア研究所のグリーフケア人材養成講座の受講が契機となり、学院と大学との共同研究という形で、少年たちへの読み聞かせが実現、2018年度は、毎週、農芸学院に通って、集団を対象にした読み聞かせを行いました。今年度は、個別の読み聞かせを3人の在院者に対して行い、これまで通算で50回の読み聞かせを実施、アンケートも取って記録しています。読み聞かせの過程で、在院者がそれぞれの本に対して、どのような反応をされたか等、具体的な例――たとえば、訓練生たちは、アーディゾーニの絵本『チムとゆうかんなせんちょうさん』『時計づくりのジョニー』を、大変な集中力で聞いていた――をあげてお話いただきました。

 農芸学院の取り組みを、更生教育のプログラムとして生かし、継続するために、語りによるお話会の定例化、集団と個別の読み聞かせを組み合わせる等の私案を述べられました。

 小山さんも概説で触れましたが、実践活動をされてきた大塚さん、町田さんとも、少年院の子どもたちが生育環境が厳しかったり、十分な教育を受けられなかったことから、自己肯定感を持てない子どもが多いことに言及されていました。そうした子どもたちが、動物訓練や読み聞かせを通じて、自己を開いていく過程が印象的でした。

 その後、十分ほど質疑の時間を取り、散会となりました。

報告:濱野

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