JBBY希望プロジェクト・学びの会報告(2020/11/28)

「コロナ禍と子どもたちの居場所――学校ソーシャルワークの視点から」

講師 金澤ますみさん(桃山学院大学教員)

 本年度希望プロジェクト・学びの会は、コロナ禍の影響で、他のセミナー同様、オンライン開催となりました。

 第一回めは11月28日、新型コロナ感染の子どもの状況について知りたいと思いから、希望プロジェクトのメンバーでもある金澤ますみさんにご登壇をお願いしました。

 前年度までは、会場に集まってお話を伺っていたのですが、今年度はオンラインのため、視聴するみなさんが各自の端末で、画面共有によるスライドを見ながらお話を聴くことになりました。

 まずは、子どもの居場所の不足は、コロナ禍前半は、まず学校ソーシャルワークについて簡単な説明に続いてコロナ禍以前のこと、休憩を挟んだ後半はコロナ禍以後のことについてお話いただきました。

 前半では以前から、子どもを囲む状況には深刻な問題があったことを確認、子どもが、家庭・学校のほかに自ら選ぶことのできる「物理的居場所」は多くが有料であり、居場所にアクセスできないという状況があります。そうした現状にあって、学校ソーシャルワーカーという立場から見える貧困、ネグレクト、子どもの健康、教職員の多忙など多岐にわたる問題を提示、教育の機会均等は、義務教育のスタート時点ですでに失われているとの認識を示していただいた上で、居場所作りに取り組む活動の紹介がありました。

 さて、そんな現況下でコロナ禍です。突然の全国一斉休校により、学ぶ権利が保障されない状態のさらなる悪化が懸念される中、現場に大きな混乱がもたらされ、支援者からは、子どものコロナそのものへの恐怖や疑問、学習面、友だち関係などの悩みや不安の声が寄せられたとのことでした。年度の変わり目にかかったため、卒業式や入学式ができない、教科書の受け渡しをどうするか等、その時期ならではの問題も発生しました。学校再開後も、子どもたちの様子の変化、コロナの影響による保護者の経済状況の悪化などもみられ、また学校現場においては、手洗い指導、消毒、検温、給食の配膳、距離を保っての授業、行事の中止など、コロナがなければ必要のなかった対応にせまられることになり、教師の多忙に拍車をかける結果になりました。

 こうした報告の後で、子どもたちの居場所確保のため、大人自身が学びあい助け合うことの重要性、学校環境に応じた工夫が求められること、また、子どものうちに、子どもの権利条約を届けたい=自分を大切してよいこと、との思いから、金澤さんご自身が関わっておいでの、絵本を通しての活動の可能性について語っていただきました。講演後の質疑では、多くの問いに丁寧にお答えいただき、会を閉じました。

 以下、個人的な感想です。居場所の問題は、昨今、言及されることも多くなってきましたが、同時に〈アクセス〉が重要であるとの認識がもっと広まる必要があると感じました。学校再開後に、怪我が増えたとの指摘に、日々出合って学びあうことの意味が逆照射された気がしました。考えてみれば、「さもありなん」のことに思い至らなかった点が多々あるとの「気づき」をいただきました。また、読み聞かせではなく「読み届け」という言葉がいいと、複数の方からのコメントがありましたが、広めていきたい言葉だと思いました。

報告:濱野京子

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