JBBY希望プロジェクト・学びの会報告(2020/12/19)

「知ることが大事! を子どもたちへ――子どもの本の編集の現場から」

講師 千葉美香さん(偕成社編集者)

 コロナ禍のなか、今回の学びの会もオンラインによる開催となりました。講師は偕成社の編集者としてこれまで多くのバリアフリー絵本を手がけてこられた千葉美香さん。偕成社が1970年代からバリアフリー絵本に取り組むようになったきっかけや初期に出した写真絵本『指で見る』などのご紹介から始まり、千葉さんご自身がニューヨークに移り住んだ友人の話に刺激を受け、世の中にはいろいろな人びとがいることを子どもたちに、子どものうちに伝えたいと思ったこと、「養子」というテーマに関心を持って『おとうとがきた!』『ねぇねぇ、もういちどききたいな わたしがうまれたよるのこと』、『たからものはなあに?』などの本を出されたことをお話しされました。

 そして、10年ほど前からバリアフリーに関する持ち込み企画が増え、自分には敷居が高いのではないかと思っていたバリアフリー絵本に取り組むようになったこと、ダウン症の女の子と彼女を取り巻くクラスの子どもたちの成長を追った『アイちゃんのいる教室』シリーズ、アスペルガー症候群の女の子フワリちゃんのスケッチをもとにした『アスペルガーの心』シリーズを出され、その制作過程では絵本として成立させるためにさまざまな工夫をされたこと、アイちゃんとクラスメートたち、フワリちゃんとお母さんなど、著者や本に登場する子どもたちと長期にわたって交流し、信頼関係を築いてこられたことなど、本ができるまでの舞台裏についての興味深いお話を伺いました。

 また、最近のお仕事として、手話についての「しゅわしゅわ村」シリーズ、ピクトグラム(絵文字)入りの絵本などもご紹介いただいた後、参加者からの質問にも丁寧にお答えいただきました。今後つくっていきたい本はLGBTをテーマにしたものだそうで、これからのお仕事がますます期待されます。

 バリアフリー絵本をつくる編集者の制作にかける思い、またそれを後押しする出版社の姿勢など、ふだんなかなか聞けない貴重なお話をたくさん伺うことができ、あらためて千葉さんがつくってこられた1冊1冊の本をじっくり手に取ってみたいと思った方は少なくなかったのではないかと思います。

 千葉さんのご講演のあとには、希望プロジェクトのメンバーで、バリアフリー児童図書の活動にかかわってきた攪上久子さんから簡単な活動報告があり、2時間の充実した学びの会を閉じました。

   報告:大塚敦子

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