IBBY記者会見:報告その② IBBY朝日国際児童図書普及賞とIBBY-iRead読書プロモーター賞
2022年3月24日
3月21日(火)、国際児童図書評議会(IBBY)は、イタリアで開催されているボローニャ・ブック・フェアの会場で記者会見を行い、IBBY各賞の受賞者を発表しました。授与式は、2022年9月にマレーシアのプトラジャヤで開催される「第38回IBBY世界大会」で行われます。
記者会見の動画は、ボローニャ・ブック・フェアのYouTubeチャンネルでご覧いただけます。▶▶
1986年に、日本の朝日新聞社の協力で創設された、子どもの読書普及に大きな成果をあげた団体に贈られる賞です。2022年は、アメリカ合衆国、アルゼンチン、イラン、インド、エクアドル、エチオピア、オランダ、カナダ、スロベニア、チリ、デンマーク、ドミニカ、フランス、ベルギー、南アフリカで活動する18団体が候補にあがりました。受賞団体には、活動資金として1万ドルの賞金が贈られます。
*IBBYのプレスリリースはこちら(英語)▶
■ 2022年受賞者
Pinnguaqta, a programme of Ilitaqsinniq – The Nunavut Literary Council, from Canada
ピングアックタ:カナダ・ヌブナト準州における幼児教育プロジェクト
人が暮らす世界最北端であるヌナブト準州は、イヌイットの自治準州として1999年に設立、カナダの5分の1の面積を占める。ピングアックタ(Let’s playの意)は、ヌブナト準州で、学校にあがる前の子どもがリテラシーの力をのばせるよう、イヌイット社会の価値観にもとづき地域で展開しているプログラム。0歳から6歳までの子どもとその保護者を対象に、スタッフや専門家、地域の長老たちが温かで安全な環境のなかで、文化に根付く「包み込むようなサポート」を提供している。世界の他の少数民族の人たちの参考になるような取り組みであることと、世代を超えた家族のリテラシーに焦点をあてた「安全な場所」という考えが評価された。
■ 2022年審査員
審査委員長
Sylvia Vardell(アメリカ合衆国)
審査員
Constanza Mekis(チリ)/Doris Breitmoser(ドイツ)/Elena Pasoli(イタリア)/Basarat Kazim(パキスタン)/Sophie Hallam(イギリス)
IBBYと中国のiRead基金が2020年に創設したまだ新しい賞です。子どもの読書活動に貢献し、社会に多大な影響を与えた個人を対象に贈られます。隔年でふたりずつ受賞し、賞金の一部は、受賞者が指定する非営利団体にも贈られます。2022年は、14人の候補者のなかから下記のふたりに贈られます。
*IBBYのプレスリリースはこちら(英語)▶
■ 2022年受賞者
Zohreh Ghaeni(ゾーレ・ガエニ/イラン)*イラン支部とカナダ支部からの推薦
Jane Kurtz(ジェーン・カーツ/アメリカ)*アメリカ支部からの推薦
Zohreh Ghaeni
ゾーレ・ガエニ(イラン)
イランの農村部で教職につき、テヘランの通信制大学で図書館学と情報科学を学んだのち、20年前に民間の非営利団体であるイラン児童文学歴史研究所を共同で設立。所長として、イランの児童文学の歴史に関する本全10巻を共著したほか、イランとアフガニスタンの働く子どもやストリートチルドレン、へき地や貧しい地域の子どもに良質な本を手渡す活動「リード・ウィズ・ミー(わたしと一緒に読んで!)」を始動。このプロジェクトは、2016年にIBBY朝日国際児童図書普及賞を受賞し、現在は、災害や新型コロナウイルス感染症の流行により困難な状況にある子どもたちにも本を届けている。
Jane Kurtz
ジェーン・カーツ(アメリカ)
エチオピアで育つ。1998年に「Ethiopia Reads」を共同で立ち上げ、識字率向上のために図書館設置の道筋を策定した。以来25年間、多様な言語を持つ先住民族の作家や画家の育成、出版のインフラ、教員や図書館員の養成に尽力してきた。2016年には、画家や子ども、ボランティアの大人たちと共にワークショップを始め、それは、文化を正しく映し、その地域の言葉と英語で書かれたシリーズ「Ready Set Go Books」の出版につながった。公用語が複数あり、土地の景色や文化や歴史を描いた本が少なく、翻訳・出版・流通に問題があり、教員や図書館員として働く機会も限られているエチオピアで、リテラシーを根づかせる取組をつづけている。
■ 2022年審査員
審査委員長
Sylvia Vardell(アメリカ合衆国)
審査員
Constanza Mekis(チリ)/Doris Breitmoser(ドイツ)/Elena Pasoli(イタリア)/Basarat Kazim(パキスタン)/Sophie Hallam(イギリス)/Wen Li(中国)