JBBY希望プロジェクト・学びの会報告(2019/12/14)

「今、必要とされるまちの子どもソーシャルワーク――貧困・虐待・いじめ、居場所を求める子どもたち」

講師 幸重忠孝 氏(NPO法人こどもソーシャルワークセンター代表、社会福祉士)

12月14日、大津市から幸重忠孝さんを講師にお迎えしてのJBBY希望プロジェクト第3回学びの会が終了しました。

 幸重さんは、児童養護施設の職員、大学教員、スクールソーシャルワーカーを経て、現在、子どもための居場所を提供する子どもソーシャルワークセンターを運営しておられます。

 幸重さんは、福祉の分野に進むまでの道程を、ご自身の中学時代の辛いいじめのご経験とそれを救った子ども劇場とNPO法人「山科醍醐子どものひろば」の活動を例に挙げ、いじめられる側の辛さ、実はいじめる側の背景にもあった辛さ、そして家でも学校でもなく、辛さをリセットして、自分らしくいられる地域の居場所の存在の重要性について丁寧に語ってくださいました。

2018年の虐待相談件数は16万件、調査開始以来28年間ずっと継続して増加し続けています。平成28年度の数値になりますが、相談対応件数は約12万3000件、一保護はそのうち約2万件、施設入所はそのうち約5000件でした。幸重さんは、何らかのサポートが必要な子どものほとんどは地域でサポートのないまま過ごしていることになり、施設に保護され入所する子どもはごくわずか、学校で救おうと思っても学校外での生活をサポートすることはできない、という思いから、子どもソーシャルワークセンターの活動を始められました。

 センターでサポートする子どもは主に小学校高学年から中高生対象で1日数人、週2回子どもたちの受入れをしています。子どもたちの数に比べて大人の数は倍以上で、子どもたちが甘えたいときに我慢しなくても済むような体制をとっています。センターではトワイライトステイを実施しており、夕方5時から親が仕事から帰ってくるまでの時間をセンターで過ごします。子どもたちは勉強したり、遊んだり、ボランティアと一緒に作った夕飯を食べて、ボランティアと共に銭湯に行って入浴して、ジュースを買って帰ります。何ということのない日常を体験するということを大事にしているということでした。

 そんなセンターの活動から見えてくる子どもたちの苦境は、母子家庭での貧困、親が精神疾患を抱えて就業できないことや、親が夜遅い仕事をせざるを得ないことに起因するネグレクト、毎日家庭内暴力を見せつけられたり、言葉による暴力を受けることによる精神的虐待などさまざまです。実例についてつぶさに紹介することは守秘義務の問題から難しい面もあるため、幸重さんは事例を短いアニメーションやヴィジュアルノベル(スライドショー)を作成しておられ、それをご紹介くださいました。映像は当然フィクションとして作られたものですが、現場の方が作成された重みは本当に胸に迫るもので、会場からはすすり泣く声も聞かれました。

 困難にある子どもたちのほとんどが行政支援などを得ないまま地域で暮らしているという現実は非常に重いものでした。個人的な感想としては、子どもたちへのサポートは早ければ早いほど効果があるのではないかということと、そして犯罪に巻き込まれたりするその一歩手前で、子どもたちが暮らすその地域で子どもたちを丸ごと受け止めていく必要があり、そのためには専門家だけでなく、地域の普通のおじちゃん、おばちゃん、お兄さん、お姉さんのつながりが欠かせないという思いを新たにしました。自分が関わる地域の活動についても大きなご示唆をいただきましたし、今後、希望プロジェクトの活動の基盤となるお話だったと思います。

 講演会終了後、子どもソーシャルワークセンターへのチャリティもグッズがすべてなくなるほどの嬉しい盛況ぶりで、これでセンターでのクリスマス会にケーキを買っていただけるとのこと。講演会参加者のみなさまのご協力に心から感謝します。

報告:中島

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