夜空にひらく(読みもの)
『夜空にひらく』
高校生の円人(えんと)は、アルバイト先で障害事件を起こし、「試験観察」の処分を受けて「煙火店(花火屋)」を営む深見静一の家で一定期間暮らすことになった。円人は幼い時に母に捨てられ、愛情を感じられない祖母とのふたり暮らしで、人を信じることができなくなっていた。しかし、深見の家族や職人たちと生活をともにし、店の仕事を手伝うなか、少しずつ心を開き、やがて自分も花火職人になりたいと思うようになる。引受人の深見も、ひき逃げの事故で4歳の息子を亡くす、という傷を持っていた。深見は事件を起こした無免許の高校生が自殺したことを知り、加害者の少年と親の心についても考えるようになって、補導委託制度の協力者になる決心をした。しかし、そのことで離婚することになり、妻と娘には遠ざけられていた。
深見をはじめ、何かと世話を焼く深見の母、あっけらかんと明るい住み込みの双子の職人、円人を深見に託した弁護士など、円人のまわりの大人たちはあたたかくやさしい。花火を見て思わず涙してしまう純粋さ、正しいこととそうでないことをきちんと見極めようとする芯の強さを持つ円人のキャラクターも魅力的で、エールを送りたくなる。円人の行動をきっかけに、深見と娘が和解する様子も描かれる。3年後に花火職人として歩んでいる最終章の円人の姿に、明るい未来が見える。(汐﨑)
出版社 | アリス館 |
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初版年 | 2023年 |
ISBN | |
ページ数 | 256頁 |
サイズ | 20×14 |
対象年齢 | 13歳から |
キーワード | 花火、煙火店、補導委託制度、家族、仕事 |
- 2023
- 256 pages
- 20×14
- Ages 13 +