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きみの話を聞かせてくれよ(読みもの)

村上雅郁 作 | カシワイ 絵

カテゴリー: おすすめ!日本の子どもの本読みもの/chapter books and novels

『きみの話を聞かせてくれよ フレーベル館文学の森シリーズ』

扉を開くと、長い三つ編みの子が、学校に住みついている黒ネコ「くろノラ」に、学校に来る子を助けてあげてと語りかける謎めいたプロローグがある。以下、新船(あらふね)中学に通う生徒たちの物語が7話、美術部の白岡六花(しらおかりっか)、ケーキ作りが趣味の轟虎之助(とどろきとらのすけ)、吹奏学部の杉谷夏帆(かほ)、陸上部の西島葵生(あおい)、剣道部の柏木正樹と祇園寺羽紗(ぎおんじうさ)、そして養護教諭の三澄楓(みすみかえで)を語り手として続いていく。同じクラスや部活動、兄弟姉妹といったつながりで、それぞれの物語は少しずつ関わり合っている。例えば、羽紗は女の子からも「かっこいい」と憧れられるイメージを崩さぬよう、大好きなスイーツを虎之助にこっそり作ってもらったり、その虎之助は「かわいい」と女の子たちにかまわれることに違和感を表明したり、夏帆はその虎之助に拒否された吹奏楽部の後輩を心配したり……。「女の子らしさ」「男の子らしさ」といったマジョリティの思考や言葉にふりまわされ、傷ついたり傷つけたりしながらも、関係を築いていこうとする中学生たちの姿が新鮮だ。
そのすべての物語に登場し、学校の中をふらふらしながら、さりげなくひとりひとりの悩みによりそい、関係をつないでいく黒野良輔という存在を設定しているのも、ユニーク。その黒野がプロローグのネコ「くろノラ」と重なって見えてくるため、学校という場で「自分らしさ」を貫く難しさを描きつつも、全体にユーモラスでしなやかな雰囲気が保たれている。(奥山)

出版社 フレーベル館
初版年 2023年
ISBN
ページ数 336頁
サイズ 20×14
対象年齢 13歳から
キーワード 学校、友だち、性

  • 2023
  • 336 pages
  • 20×14
  • Ages 13 +