かげふみ(読みもの)
『かげふみ』
広島に暮らす祖母の家で夏休みを過ごすことになった小学5年生の拓海(たくみ)。近所の児童館の図書室で、ひとりで本を読んでいる三つ編みの少女、澄(すみ)ちゃんと出会う。雨の日にだけ図書室に現れる澄ちゃんは、「影をつかまえる話」を探しているという。いっしょに影の出てくる本を探していた拓海は、他の人たちには澄ちゃんの姿が見えていないことに気づく。そして図書室の司書から、この児童館は戦時中、小学校だったこと、たくさんの子どもが原爆で命を落としたこと、壁の前で被爆した子がいて、その子の体が盾になり壁のタールがまるで影のように溶け残ったらしいという話を聞く。8月6日の原爆忌、お昼に児童館に行くと、澄ちゃんが中庭で影を探している。真上から照りつける日差しのせいで、影がほとんどなくなった拓海の姿に、澄ちゃんは初めてうれしそうに笑い、かげふみの代わりに石けりで遊ぶ。やがて澄ちゃんの姿は遠く消えていった。
著者は被爆2 世。爆風で飛ばされたガラスの破片や、逃げ込んだ人が身に着けていたものの一部を、川で子どもたちが拾い集めるエピソードなどから、原爆は遠い過去のできごとではなく、今なお続く歴史の一部なのだと改めて痛感する。広島の子ではなく東京から来た子が主人公であることで、「ヒロシマ」を知らない子どもも、物語を通して、拓海とともに原爆のことを知り、考えることができるだろう。小5国語教科書に掲載された短編「たずねびと」もあわせて収録。(笹岡)
出版社 | 光村図書 |
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初版年 | 2023年 |
ISBN | |
ページ数 | 168頁 |
サイズ | 20×14 |
対象年齢 | 11歳から |
キーワード | 戦争、原爆、広島、幽霊 |
- 2023
- 168 pages
- 20×14
- Ages 11 +