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ゆうすげ村の紙すき屋さん(読みもの)

茂市久美子 作 | 門田律子 絵

カテゴリー: おすすめ!日本の子どもの本読みもの/chapter books and novels

『ゆうすげ村の紙すき屋さん わくわくライブラリー』

高校を卒業して公民館につとめていた原田かえでは、ゆうすげ村の親戚の旅館の手伝いをしていて、食器を包んでいた古い和紙に心をひかれる。昔、農家の人たちが、冬の農閑期に山からコウゾを採ってきてすいた「やまが和紙」だと聞き、自分も和紙を作りたいと勤めを辞めて紙すきを習い、山の中にあった小屋を改良して工房を始めた。すると、かえでが作った和紙を求めて、四季折々さまざまな客が訪ねてくる。ちょっと変わった客たちと、かえでの作った和紙をめぐる奇妙な物語が6話収められた短編連作。
「源兵衛山のフクロウ便」では、4月のある朝、工房の戸口にフキノトウとタラの芽がいっぱい入った、アケビのつるで編んだ籠が置いてあった。フクロウの宅配便の新米配達員が間違えて置いていったのだが、それがきっかけで、和紙で作った小物と山菜が、かえでとフクロウの間を行き来する、早春の匂いが香り立つような作品だ。「魔法の糸」では、仙女の魔法で天の川から下界に下され、花屋の若者と、カエルに変えられたカササギと、妖精のような小さな女の子を、かえでが和紙を使って天界に戻す。「ねがい薬」では、ペルセウス座流星群の流星痕(りゅうせいこん)を捕まえる袋をふさぐ紙をすくなど、伝統を復活させた和紙を介して異世界と交感する不思議な話が続く。所々でコロナ禍をにおわせながら「やまが和紙」の魔力の由来を「プロローグ」と「エピローグ」で、さり気なく山姥(やまんば)伝説に絡める構成もみごとだ。(野上)

出版社 講談社
初版年 2023年
ISBN
ページ数 192頁
サイズ 22×16
対象年齢 9歳から
キーワード 山、和紙、動物、不思議

  • 2023
  • 192 pages
  • 22×16
  • Ages 9 +