ひとりかもしれない(読みもの)
『ひとりかもしれない ものがたりの庭シリーズ』
小学4年生の貝は、1週間前にママが再婚したばかり。新しく父親になった幸介さんはとても優しい人だが、貝はまだ「パパ」とは呼べずにいる。近いうちに引っ越して転校しなくてはならないことも、本当はいやなのに言いだせない。時々、ママと離婚する前のパパのことを思い出し、後ろめたさを感じている。学校では、保育園からの幼なじみの高広くんと、初めて同じクラスになった。保育園の頃はいつも弟のように自分にくっついていた「タカヒロ」の変化に戸惑うが、友だちの世里ちゃんから、高広くんのことが好きだと打ち明けられ、貝も自分の恋心を自覚する。思ったことをはっきり口にする世里ちゃんに嫉妬し、みじめな気持ちになる。家でも学校でももやもやした気持ちがたまる一方だ。ある日、学校から帰る途中、近所のおじさんに車に傷をつけたと言いがかりをつけられてしまう。「うちの子はやってません」ときっぱりと対応してくれたことに感謝しながらも、貝は幸介さんに素直に心を開けない。「ひとりかもしれない」という寂しさと不安に襲われるが、高広くんの、保育園の頃と変わらない一面に気づいたのをきっかけに、自分の気持ちを口にできるようになっていく。主人公が自分の気持ちに向き合い、解きほぐしていく過程がていねいに描かれる。一見何気ない日常を背景に、思春期に差しかかった子どもの、複雑に揺れ動く気持ちが過不足なく盛り込まれ、忘れがたい印象を残す。(笹岡)
出版社 | フレーベル館 |
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初版年 | 2023年 |
ISBN | |
ページ数 | 132頁 |
サイズ | 21×16 |
対象年齢 | 9歳から |
キーワード | 再婚、家族、友情、恋 |
- 2023
- 132 pages
- 21×16
- Ages 9 +