スクラッチ(読みもの)

歌代朔 作 | 岡野賢介 装画

カテゴリー: おすすめ!日本の子どもの本読みもの/chapter books and novels

『スクラッチ』

鈴音(すずね)がバレー部のキャプテンになった中学3年の夏、コロナ禍で総体が中止になった。鈴音は目標を失い、やるせない思いをどこにぶつけていいかわからずにいた。美術部の部長の千暁(かずあき)も、絵を出展する予定だった「市郡展」の審査が中止になりがっかりするが、何も考えまいとした。
審査はなくなったが、千暁は体育祭に飾るパネル絵の制作に取り組む。その絵に鈴音はうっかり墨汁をたらしてしまう。黒は千暁がめったに使わない色だった。5 年前に洪水の被害に遭った後は、明るい色ばかり選ぶようになっていたのだ。千暁は汚された絵を真黒に塗りつぶし、パレットナイフでその黒を削るスクラッチの技法で絵を描き始めた。塗りこめた黒から下地の鮮やかな色合いが見えたとき、千暁の心に変化が起きる。我慢することを当たり前と思い、「陰キャ」「コミュ障」を自称して人前では感情を極力出さずにいたが、「これが描きたい」という強い感情に導かれるまま、キャンバスに向かった。描き終えたとき、千暁には他人の目や評価を気にしない今の自分の姿が見えた。部員に対して平気な顔を装っていた鈴音も、汚した絵の前で感情を爆発させて大泣きをして、何かを吹っ切った気持ちになる。コロナ禍の陰鬱な経験を乗り越えて成長する中学生のひと夏を描いた作品。(汐﨑)

出版社 あかね書房
初版年 2022年
ISBN
ページ数 336頁
サイズ 20x14cm
対象年齢 13歳から
キーワード コロナ禍、部活、バレーボール、絵

  • 2022
  • 336 pages
  • 20x14cm
  • Ages 13 +

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