ガラスの魚(読みもの)

『ガラスの魚』
昭和20 年代、瀬戸内海の島で母親とふたりで暮らす中学1年生のアキラは、足のけががもとでせっかくの夏休みを棒に振ってしまう。夏休み最後の日、アキラは学校の近くの川で変死体を発見する。果たしてこれは事故か、それとも事件か? 真相が明かされていくのに並行して、アキラを目の敵にしているクラスメートのチョーカイによる嫌がらせ、長く音信不通だった父親との再会、母親と漁協の組合長との間の再婚話、本土から転校してきた少女への恋、アキラをかわいがっていた祖母の死など、アキラを取り巻く人間関係が描かれる。何をやってもうまくいかない、ついてないと将来に不安をおぼえるアキラ。しかし、さまざまな人との出会いや別れを経て、精神的に成長していく。
海辺の町の人びとの日常が、まるで映像のように浮かび上がってくる文章で、読者を物語の世界に引き込む。戦後、日本が軍国主義から民主主義の国になり、これまでの価値観が大きく覆されるなか、時に危うさを感じさせながらも、たくましく生きる子どもたちの姿がまぶしい。最後の章、アキラとチョーカイがノーブレーキ自転車で急坂を駆け下り、度胸を競う「肝だめしレース」は、読後にさわやかな余韻を残す。1985 年刊『海のコウモリ』、1991 年刊『カモメの家』に続く3 部作の完結編。(笹岡)
出版社 | 理論社 |
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初版年 | 2021年 |
ISBN | |
ページ数 | 352頁 |
サイズ | 19x14cm |
対象年齢 | 13歳から |
キーワード | 親子、友情、恋愛、島 |
- 2021
- 352 pages
- 19x14cm
- Ages 13 +