たぶん みんなは 知らないこと(読みもの)

『たぶん みんなは 知らないこと』
小学5年生のすずには、重度の知的障害があり、言葉を発することができない。特別支援学校に通うすずの日常を、すずの心の声を中心に、母親と担任の先生が交わす連絡帳、兄のブログ、クラスの学級通信など、視点を変えながら多角的に描いた物語。
周囲の人たちに支えられ、見守られながら、ゆっくりと成長していくすず。すずの素直さ、優しさ、芯の強さにひきつけられる。しかし、きれいごとだけではなく、時にからかわれたり傷つけられたりすることもある。バスの中で老女から心無い言葉をぶつけられたのをきっかけに、すずの兄は、役に立たない人間には生きていく意味がないのだろうかと自問する。それでも「妹がこうやって、同じ世界に生きていることが自分にとっては大事なことなんだ」という結論に至る姿に、実際に特別支援学校に勤務している著者の強い思いを感じる。物語の終盤、すずは家族が留守にしている間に、雪の中をひとりで外に出かけていく。すずの高揚した気持ち、焦りや不安、そして達成感を、読者は一緒に体験し、すずの心の中に広がる豊かな世界を知ることができる。障害者は助けてもらうだけの弱い存在ではなく、その存在によって何かを与えられている人もたくさんいる。誰もが存在するだけでよいのだという希望の持てる結末に、明るい気持ちになる。(笹岡)
出版社 | 講談社 |
---|---|
初版年 | 2022年 |
ISBN | |
ページ数 | 192頁 |
サイズ | 20x14cm |
対象年齢 | 11歳から |
キーワード | 知的障害、特別支援学校、家族、コミュ ニケーション |
- 2022
- 192 pages
- 20x14cm
- Ages 11 +