2026年「IBBYオナーリスト」日本の作品決定!

〇文学作品
佐藤まどか『スクランブル交差点』小学館

〇イラストレーション作品
ザ・キャビンカンパニー『ガマ千びき イワナ千びき』最上一平作、文溪堂

〇翻訳作品
野沢佳織『モノクロの街の夜明けに』ルータ・セベティス作、岩波書店

JBBYのおすすめ本選書チームは、2026年の「IBBYオナーリスト(IBBY Honour List 2026)」日本の作品を選定しました。

 「IBBYオナーリスト」は、子どもの本を通しての国際理解を提唱するIBBY(国際児童図書評議会)が、1956年から隔年で発行している、世界的に影響力のある児童書リストです。文学作品・イラストレーション作品・翻訳作品の3部門があり、IBBYに加盟する国と地域が、2年に一度、ほかの国でも読んでほしいすぐれた子どもの本を選定します。IBBYの日本支部であるJBBYも、子どもの本の専門家から構成する選考委員会が毎年検討を重ね、日本を代表する作品を選びます。

 このリストは、世界中の翻訳出版関係者にとって、すぐれた児童書発掘のデータベースになります。また、ほかの国の子どもたちが成長の過程でどんな本を読んでいるかという情報は、国際理解・多文化理解を進めるうえで大変興味深い資料にもなります。

 なお、JBBYは、IBBYオナーリストに選ばれた作家・画家・翻訳家・各出版社に「JBBY賞」をお贈りしています。

* IBBYオナーリストとは
* 日本の歴代作品と受賞者

2026年「IBBYオナーリスト」日本の作品

●文学作品●
『スクランブル交差点』佐藤まどか作、小学館、2023

高校1年生の2学期、強のクラスにイタリアから交換留学生のマルコが編入してくる。日本文化に詳しく英語も水泳も得意なマルコは、すぐに女子たちの人気者になるが、意地悪をする輩も現れる。マルコが帰国する3学期の終わりまで、強、マルコ、由衣、マルコとつきあうことになる愛たちの、波乱万丈の7カ月が展開する。そして2年後、世界的な感染症のパンデミックに見舞われたなかで高校3年が始まる。愛はマルコのいるイタリアの大学への進学を目指し、由衣はデザインの道を選び、強は大学の推薦選抜に落ちる。さまざまな方向から人びとが行き交うスクランブル交差点のように、イタリア人留学生を核に、強の目を通して描かれた痛快な青春群像。

【佐藤まどか】 児童文学作家。1987年からイタリア在住。2006年にデビューして以来、絵本からYAまで幅広く活躍している。代表作に、『一○五度』『アドリブ』(以上あすなろ書房)、『アップサイクル! ぼくらの明日のために』(ポプラ社)などがある。

●イラストレーション作品●
『ガマ千びき イワナ千びき』ザ・キャビンカンパニー絵、最上一平作、文溪堂、2024

滝つぼにガマがいる。そこにイワナがやってくる。イワナは滝を登ろうとするが何度繰り返しても登れない。ちっともへこたれないイワナにガマは憧れ、好きになって、ガマイワナとなることを思いつく。大嵐の日、荒れ狂う水とともに「あたらしい自分にであうんだ」というイワナは、滝の上へ行ってしまった。滝を登ることができないガマは陸に上がって、滝の上へたどりつくことができた。そこには千びきのガマと、千びきのイワナがいた。画面いっぱいに広がる表情豊かなイワナとガマ。圧倒的な迫力の絵に魅せられる。

【ザ・キャビンカンパニー】 阿部健太朗と吉岡紗希による二人組の絵本作家、美術家。ともに大分県生まれ、大分県在住。絵本・立体造形・アニメーションなど様々な作品を生み出し国内外で発表している。代表作に、『がっこうにまにあわない』(あかね書房)、『ゆうやけにとけていく』(小学館)、『ミライチョコレート』(白泉社)などがある。

●翻訳作品●
『モノクロの街の夜明けに』野沢佳織訳、ルータ・セベティス作、岩波書店、2023

1989 年は、ベルリンの壁崩壊など社会主義国に次々革命が起きた年として歴史に刻まれる。その年の最後に政権崩壊したのはルーマニアだった。チャウシェスク大統領の独裁下で市民を相互監視させる過酷な社会状況を、男子高校生クリスティアンの視点から描く。秘密警察との裏取引で密告者にならざるをえなかったクリスティアンは、自分を秘密警察に売ったのは誰かと疑惑を抱きつつも、なんとか社会を変えようと行動に移していく。息詰まる緊迫したストーリー運びからは、革命へと動いていく社会状況が克明に伝わってくる。

【野沢佳織】 英語→日本語の翻訳家。東京都生まれ。代表作に、『銀のロバ』(ソーニャ・ハートネット作、主婦の友社)、『ウェストール短編集 遠い日の呼び声』(ロバート・ウェストール作)、『ぼくの心は炎に焼かれる』(ビヴァリー・ナイドゥー作、以上徳間書店)などがある。

2026年IBBYオナーリスト選考委員

 奥山恵(評論家、児童書専門店)
 近藤君子(図書館員)
 坂口美佳子(科学読物研究会)
 さくまゆみこ(翻訳家、編集者)
 笹岡智子(図書館員)
 神保和子(家庭文庫)
 土居安子(大阪国際児童文学振興財団総括専門員)
 野上暁(評論家、編集者)