IBBY記者会見②:2024年IBBY朝日国際児童図書普及賞とIBBY-iRead読書プロモーター賞発表
2024年4月9日
4月8日(月)、国際児童図書評議会(IBBY)は、イタリアで開催されているボローニャ・ブック・フェアの会場で記者会見を行い、IBBY各賞の受賞者を発表しました。授与式は、2024年8月にイタリアのトリエステで開催される「第39回IBBY世界大会」で行われます。
記者会見の動画は、ボローニャ・ブック・フェアのYouTubeチャンネルでご覧いただけます。▶▶
1986年に、日本の朝日新聞社の協力で創設された、子どもの読書普及に大きな成果をあげた団体に贈られる賞です。2024年は、アルゼンチン、アゼルバイジャン、カナダ、フランス、ドイツ、イラン、オランダ、スロべニア、スペイン、スイス、アメリカ、ベネズエラで活動する13団体が候補にあがりました。受賞団体には、活動資金として1万ドルの賞金が贈られます。
*IBBYのプレスリリースはこちら(英語)▶▶
■ 2024年受賞者
ATD (All Together in Dignity) Fourth World’s Street Libraries
ATD フォース ワールズ ストリート ライブラリーズ(IBBYフランス支部推薦)
母体である「ATD フォース ワールズ」は1950年代にフランスで生まれ、現在は貧困、教育、人権などの問題を解決するためのプロジェクトを世界各地で行っている。今回は、フランスで活動する ATD Quart Monde France が1968年から実施している屋外図書館プロジェクト ストリート ライブラリーズ が受賞した。60以上ある街角図書館は、カラフルな毛布というシンプルなものをつかい、読書とその後の活動のためのスペースを公共の場に設け、だれでも簡単に参加できる機会をつくってきた。子どもたちの学習意欲を培い、創造性をのばし、貧困のサイクルからぬけだせるようにすることを目的としている。フランス国民教育・青少年省、文化通信省、ドパルデュー基金から88,000ユーロの支援を受けている。IBBY朝日国際読書普及賞の審査員は、限られた物資でできるプロジェクトの汎用性と、PC等を活用した研修を通して地域が関われる点を評価した。
■ 2024年審査員
委員長
Junko Yokota(アメリカ)
審査員
Tina Bilban(スロベニア)/Ingrid Källström(スウェーデン)/Elena Pasoli(イタリア)/Luis Zendrera(スペイン)
IBBYと中国のiRead基金が2020年に創設したまだ新しい賞です。子どもの読書活動に貢献し、社会に多大な影響を与えた個人を対象に贈られます。隔年でふたりずつ受賞し、賞金の一部は、受賞者が指定する非営利団体にも贈られます。2024年は、13人の候補者のなかから下記のふたりに贈られます。
*IBBYのプレスリリースはこちら(英語)▶
■ 2024年受賞者
Basarat Kazim(バサラット・カズィム/パキスタン)*パキスタン支部からの推薦
Irene Vasco(イレーネ・バスコ/コロンビア)*カナダ支部からの推薦
バサラット・カズィム(パキスタン)*パキスタン支部からの推薦
カズィムを推薦したIBBYパキスタン支部は、カズィムを「無私で献身的な人道主義者、教育者、児童書の作家、社会活動家、そして子どもの読書における強固な守り手であり、すばらしい仕事をなしとげた普通の人」だと評した。その革新的な活動は1978年、ひとつの図書館で500人の生徒と関わったことからはじまった。その後、アルフ・ライラ(千一夜物語)ブックバス協会の活動を7,000以上の図書館に広げ、それによって100万人の子どもたちがサービスを受け、1,000人以上の教員が研修に参加した。パキスタンのすべての子どもが読書の機会をもつべきだという信念から、あらゆるものを活用し、子どもの読書の場をつくったことが評価され、2023年にインスパイアリング・ウィメン・アワードを受賞した。そのほかにも多くの受賞歴がある。「可能性は無限大」をモットーとして、ラクダ、ヤク、人力車、自転車、バイク、箱を利用した移動図書館を提供してきた。500人の教員、1,000人の教育実習生、20人のアーティスト、そして指導者を指導する立場にある200人に研修を行ったことからも、カズィムの影響はよくわかる。破壊と荒廃と貧困の時代に、カズィムが一貫して国を助けてきたことは、胸を打つ。カズィムはパンデミックのときも、特別な需要にこたえる新しい方法を示し、リテラシーを推進した。
イレーネ・バスコ(コロンビア)*カナダ支部からの推薦
1980年代から活躍しているコロンビアの児童文学の専門家。講師であり、作家であり、読書活動推進家でもある。児童文学とYA文学の作家として国内外で知られている一方、南米やスペインの会議に参加し、読書活動推進における国際的なリーダーとなった。お守りのごとく常に本をもち歩き、先住民の暮らす地域や危険な場所におもむいて子どもたちに読み聞かせを行い、様々な問題と向き合ってきた影響力のある人物。どんなところでも、たとえばバスの中でも、そこで女性の話を聞き、それを本にしてきた。バスコの活動はしっかりとコーディネートされ、コンセプト化されている。村のコミュニティホームに小さな図書館をつくったり、単語の発音を教える際には印刷機を活用したりするなど、多くの点において革新的である。読書推進に関する本も執筆し、自身の経験を精力的に伝え、人々に影響を与えている。
■ 2024年審査員
委員長
Junko Yokota(アメリカ)
審査員
Tina Bilban(スロベニア)/Ingrid Källström(スウェーデン)/Elena Pasoli(イタリア)/Luis Zendrera(スペイン)/Wen Li(中国・iRead基金)