【報告】JBBY希望プロジェクト・北海道で出張WSを行いました

2025年度から2026年度にかけて、JBBY希望プロジェクトでは、沖縄、東京、北海道の施設を村中李衣さんが訪問し、出張ワークショップを実施します。*CBGMこども財団助成事業

JBBY希望プロジェクト北海道訪問報告 2026.3.30

日時2026年3月30日(月)10時~15時
場所Re~らぶ(就労支援B型事業所)(北海道札幌市)
対象精神障がい者(高次脳機能障害、発達障害)、知的障がい者、身体障がい者
20代から70代まで 約20名
訪問者村中李衣、清水祐子(ミズノ兎ブックス編集者)

◇ 報告:村中李衣

これまでの読みあいを通してのJBBYとのかかわり

『ちょっと不思議な絵本の時間 おとなが読みあい語りあう』(かもがわ出版)

 2015年、かもがわ出版から発刊された『ちょっと不思議な絵本の時間 おとなが読みあい語りあう』は、Re~らぶで10年以上続けられてきた施設での読みあいの記録をまとめたものである。JBBYからの推薦を受け、2017年のIBBYバリアフリー図書にも選ばれた。記憶の保持や感情のコントロールが難しいとされる高次脳機能障害という病を抱えながら、互いが物語を受けとめあい、誰もが感じたことを分かちあい共感しあう障がい者施設ではまれな試みが注目されてのことであった。ところが、年を重ねるうちに一人一人の利用者の労働に対する意識が高まり地域での技術的な評価も上がっていく中で、企業からの業務委託が急増していった。これは、利用者一人一人の生きがいや自尊心を高めていく半面、仕事以外の時間で仲間同士で語りあったり気持ちを分かちあうといったかつての読みあい活動をする時間が取れなくなってきていた。今回の訪問を機に、久しぶりに(前回の村中訪問から7年ぶり)かつてのような読みあいの場を持つことで、改めて「ものがたり」の楽しさを全員で味わい、活動の新たな活力と仲間意識の向上につなげたいという希望をもって、迎え入れられた。

訪問の流れ

 午前中、利用者さん全員に、午後からの読みあい活動の予告と訪問者の紹介があった。その後12時過ぎまで、JBBYより贈られた30冊の「あしたの本だな」から選ばれた本のセッティングと、理事長・施設長・青木美和子氏(札幌国際大学教授)5人で午後の読みあいの段取りを確認。さらに、現在の利用者さんと図書のかかわり等について話し合いが行われた。

 午後からの読みあいは、まず、贈呈された30冊の本の紹介を行うことから始めた。特にクイズ形式で楽しんだのは『ホネホネたんけんたい』(アリス館)、数ページをめくりながら、利用者さんの呼吸に合わせ歌うようにして紹介したのが『だらだら動物図鑑』(エクスナレッジ)と『必死すぎるネコ』(辰巳出版)。人生そんなにぎっちぎちに歩まずともよいよいと力の抜き具合を教えてくれる写真絵本と、人生なりふりかまわず必死で勝負する瞬間がいるもんさとと教えてくれる写真絵本。対照的な2冊、当然読み方も声のトーンも変わってくる。それを大いに楽しみ味わい尽くす利用者さんの姿が印象的だった。4冊目の紹介は夜空の青がさまざまな場所、さまざまな時間の美しい静寂を伝える写真絵本『宙の月光浴』(小学館)。さっきまで体をよじって大笑いしていた人たちが、息をのみ、青い光を全身に浴びている。その切り替えの柔軟さに見とれる。最後に『さわるめいろ』(小学館)を、一人ずつに実際に指で触ってもらいながら、この絵本のみんなでの楽しみ方を試してもらった。

 5冊の紹介の後、それぞれが、安心して自分にピッタリな絵本を探すように、並べられた本たちに近づき、手に取って楽しむ姿が印象的だった。

『ホネホネたんけいたい』(アリス館)

『だらだら動物図鑑』(エクスナレッジ)

『必死すぎるネコ』(辰巳出版)

『宙の月光浴』(小学館)

『さわるめいろ』(小学館)

訪問を終えて

 長い年月お会いできていないメンバーさんたちが、高次脳機能障害という記憶の保持の困難を抱えているにもかかわらず、「覚えていますよ」と非常に柔らかい迎え入れをしてくださったのは、やはり「ものがたりを介した出会い」であったからだと思う。託された30冊の本たちが、お一人ずつの人生の波に立ちあい、ささやかな希望の光となることを祈りたい。