JBBY翻訳フォーラム・報告(2021/01/16)

 1月16日の子どもの本の翻訳フォーラムは、IBBYオナーリスト受賞翻訳家をお迎えしオンラインで開催されました。登壇したのは、パネリストとして斎藤倫子さん(英語)、西村由美さん(オランダ語)、母袋夏生さん(ヘブライ語)、進行役としてさくまゆみこさん(英語)という豪華なメンバーです。

 オンラインに参加されたのは、児童文学の愛読者、翻訳を生業にされている方々、翻訳家になりたい大学生、図書館司書、家庭文庫の主催者、編集者などで222名でした。

 第一部では、それぞれの翻訳家がどういったことでその言語の翻訳をするようになったのかという歩みや、編集者に訳したい本をどうやって持ち込んで出版につなげていったか、それぞれの訳書にまつわるエピソードを話いただき、第二部では、翻訳に関する質問、普段の仕事のスタイルなど視聴者からの質問に答えていきました。

 それぞれの翻訳家が語る翻訳への熱意は、共通して子どもの頃の読書体験からはじまっているのだと感じました。翻訳する時の心構え、書籍として出すための取り組み方は、視聴者にとって大いに刺激になったと思います。私が興味深かったのは、西村由美さんの『イップとヤネケ』を出すまでのお話でした。母袋夏生さんのヘブライ語の歴史もおもしろかったですし、斎藤倫子さんとさくまゆみこさんの地下鉄道に関するお話も、昨年の黒人差別による一連のニュースとつながっていてリアリティある刺激的なお話でした。

 新型コロナウィルス感染拡大による社会不安の中で、私たちは新しいを模索しています。Zoomによるオンライン開催というハードルもありましたが、それは逆に海外や、遠隔地からの参加も可能になり、新たなイベントの形を見いだすことにつながってきています。つぎつぎとたくさんの質問をいただき、その後のアンケートも150件を超えました。なかなかこれだけの翻訳家を一堂に会することは少なく、有意義なお話ばかり。児童書に関わる人々にとって、勇気と希望をもらった時間でした。

                            報告:中井はるの