【希望プロジェクト・野馬追文庫報告】2021年秋冬

JBBYは、東日本大震災の被災地支援として、地震・津波・原発事故すべてに被災した福島県南相馬市の子どもたちや、その子どもたちを支える方たちに、定期的に子どもの本を届けています。

本年は震災から10年。さまざまな場所で、この10年間子どもたちの命と生活を懸命に守りぬき、未来につなげてきた被災地の人たちの努力を振り返り、これからの子どもの未来を紡いでいくための思いや知恵が語りつづけられています。

12月12日にオンラインで行われた、OMEP(世界幼児教育・保育機構)日本委員会【保育リレーフォーラム】第2回「南相馬市における子育て支援~震災後10年を振り返り、新たな課題と展望」では、野馬追文庫の本を受け取ってくださってきたお二人の方がお話しされました。

近藤能之先生(南相馬市よつば保育園副園長)
野馬追文庫をお送りしていた「37カフェ(南相馬の男性たちが立ち上げたママたち応援カフェ)」は、ランニングコストから閉鎖になりましたが、新たに「南相馬ウクレレ部」「にじのかなた(絵本ライブ)」「小高やどりぎ(冒険遊び広場)」を立ち上げたそうです。また南相馬市に子ども食堂「ゆるっと」ができ、福島県にはふくしま子ども食堂ネットワークができたとのこと。いまこの地域には貧困対策等いくつかの課題はありますが、「子育ての安心感つくり」がやはり大事であること、それを楽しく無理なくやる、そのために「つながること」と言葉を結ばれました。

聖愛ちいろば園

遠藤美保子先生(南相馬市聖愛ちいろば園園長)
昨年6月、聖愛こども園は、ちいろば園という0.1.2歳児の小規模園(定員19名)をつくり、遠藤先生は現在そこの園長先生です。ちいろば園の園長に就任される前は、聖愛こども園の園長として、自然保育を何よりも保育のテーマに掲げてこられました。東日本大震災に襲われ、その後は子どもと職員を必死に守りながら、放射線被害で触れることもできなくなってしまった園の自然をなんとか取り戻そうと、涙ぐましい努力と頑張りをなさっていらっしゃいました。今は「取り戻す」から「つくり出す」に方針を転換したと、遠藤先生はきっぱりおしゃっていました。
ちいろば園では遊具は外にひとつもおかず、土にさわり、小石や棒を拾い、葉っぱや花を摘んで、自分たちで遊びをつくり、遊びを楽しむ子どもたちの姿を大事に見守っておられます。畑での作物作りでは、ちいろば園の子どもたちばかりでなく、聖愛こども園の園児たちや保護者にも畑作業と収穫を体験してもらっているとのことでした。畑に小さな子どもの姿があるので、ちいろば園は地域の人のお散歩コースになり、そこで一休みして子どもたちとふれあったり、畑のことを教えていってくれたり、苗を持ってきてくれたり、今はそんな場になっているというお話がとても印象的でした。

2021年9月、聖愛こども園とちいろば園に、地元のおおうち書店から下記の本を届けていただきました。
今年の保育テーマ「森」と、オリンピック・パラリンピックがあったことを選書に反映しました。

<聖愛こども園・ちいろば園>

『国旗のえほん』 戸田やすし、戸田デザイン研究所
『とんとん とめてくださいな』 こいでたん文、こいでやすこ絵、福音館書店
『マーシャとくま』M・ブラトフ作、うちだりさこ訳、福音館書店
『ヘンゼルとグレーテルのおはなし』 バーナデット・ワッツ作、福本友美子訳、BL出版
原町聖愛こども園・聖愛ちいろば園からいただいたクリスマスカード

また小高交流センターには、以下の本をお届けしました。

<小高交流センター>

『国旗のえほん』戸田やすし、戸田デザイン研究所
『サリーのこけももつみ』ロバート・マックロスキー作、石井桃子訳、岩波書店
『しりとりのだいすきなおうさま』中村翔子作、はたこうしろう絵、鈴木出版
『世界一おもしろいくらべっこ大図鑑』クライヴ・ギフォード文、ポール・ボストン絵、小林玲子訳、河出書房新社
『とんとん とめてくださいな』こいでたん文、こいでやすこ絵、福音館書店
『パパ おつきさまとって!』エリック・カール作、もりひさし訳、偕成社
『バスがきました』三浦太郎作、童心社
『ヘンゼルとグレーテルのおはなし』バーナデット・ワッツ作、福本友美子訳、BL出版
小高交流センターのクリスマスイルミネーション