人間として扱われなかった人びと（アメリカ・読みもの）

IBBYバリアフリー図書2023_障害が描かれた本

『人間として扱われなかった人びと』

　この本の舞台は、1928 年にマサチューセッツ州にあった障害児のための学校（当時は「白痴学校」と呼ばれた。現在「白痴」は差別用語のため使われていない）。ここでは身体障害、精神障害、知的障害のほか、人種、セクシュアリティ（性的傾向）、異常とみなされる行動で「障
害者」と判断された子どもを無期限に収容していました。物語の主人公は、厳格な日課や規則、いじめに耐えながら学校を逃げ出す計画を立てる10 代の4 人の少女たちです。
　過酷な状況を描く本作は、2014 年まで実在した学校の医療記録や史実をもとに書かれました。障害者が社会から隠されていた様子や施設の劣悪な環境が浮き彫りにされています。優生思想に焦点を当てており、現在では差別的で不適切とされている専門用語や言い回しを読むのはつらいものです。少女たちの自らを恥じない姿勢や強い絆がしっかり語られています。著者は脊椎障害のため、当時なら収容されていたかもしれないとあとがきで述べています。重要な問題にもかかわらず、話し合う機会が少ないテーマに関心を向けさせる作品です。