奉還町ラプソディ(読みもの)
『奉還町ラプソディ』
山口県から岡山県に引っ越してきた「ぼく」は、近所の奉還町商店街のまんじゅう屋さんのあつしと仲よくなる。奉還町商店街は、江戸の終わりの大政奉還に際して配られた奉還金をもとに武士が始めた歴史ある通りだが、テレビの取材があってもまとまらず、いまひとつ盛り上がらない。そんな商店街でのさまざまなできごとを、「ぼく」の視点から描く6話を収めた連作短編集。
毎日マネキンを並べた店の前に仁王立ちしている洋装店べにやの怖いおっちゃんが、じつは時々マネキンたちといっしょに空を飛ぶ空想にふけっていたり、いろいろな動物たちの毛や皮で作られた道具を使っている理髪店のいのうえさんが、動物たちの命を悼みつつ野犬とたたかったり……。満州での子ども時代の花畑に思いをはせて地面に転がるみつさんや、夫の思い出の明太子を博多まで買いにいくナミばあなど、一筋縄ではいかない人びとの行動にふりまわされつつも、「ぼく」やあつしは、それぞれの人生の重さを感じていく。その一方で、カフェや古着屋などを始める若者や外国人、ブライダルアドバイザーとして奉還町商店街での結婚式を企画するあつしの兄など、新しい世代も楽しく描かれている。
実在する商店街を舞台に、古さと新しさ、日常と非日常、過去と未来が交錯する不思議な味わいがある。(奥山)
出版社 | BL出版 |
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初版年 | 2022年 |
ISBN | |
ページ数 | 208頁 |
サイズ | 21×16 |
対象年齢 | 11歳から |
キーワード | 商店街、老人、地域社会 |
- 2022
- 208 pages
- 21×16
- Ages 11 +