５年３組びっくりだ（読みもの）

『５年３組びっくりだ　短編小学校３』

５年生のあるクラスの子どもたちの様子を、章ごとに主人公を変えて15 章にまとめた「短編小学校」シリーズの３作目。工業地帯のど真ん中にある水明市（すいめいし）の小学校の15 人の児童が、「びっくりだ」と感じた経験が語られている。
「スカウト」は、成哉（せいや）が河原で自分の体を使ってさまざまな音を創り出して夢中になっていると、高校生のヒューマンビートボックスの音楽グループからスカウトされる話で、「キャッチフレーズ」では、水明市の観光のためのキャッチフレーズを考えた瑞月（みづき）が、入賞した同級生のミアの作品に驚く。「歌姫」では、レオがフィリピン人のジャスミンのレストランで夕食を食べていると、テレビにフィリピン人の歌手が出てきて、ジャスミンに会いたいと言う。また、「招待券」は、放課後、マリンポートタワーへ遊びに行った順規（じゅんき）と幸平が、過去に撤去された水族館にいたペンギンやジンベエザメなどに出会う。
他にも遠足や校外学習、長縄大会、他校との交流とほのかな恋愛、人間っぽい家事ロボットが家に来た話、級友の祖父や祖母と知り合う話、川に迷い込んだエイと会話をする話などが収められている。
それぞれの章は短くて読みやすく、「びっくり」の対象や内容も、子どもたちの文化的背景や家族構成も多様で、主人公ひとりひとりの悩みや発見がユーモラスに描かれている。（土居）