アデリの夏（ポーランド・読みもの・ポーランド語）

IBBYオナーリスト2022_文学作品

『アデリの夏』

ごく普通のアパートで育ってきたアデリのひと夏の体験が、32 のエピソードでリリカルに描かれている。アデリは、世間の目から見て変わりつつあった。女友だちは、彼女を憧れのまなざしで見、男の子たちは、今までと異なる意図で彼女に近づこうとする。そして、アデリ自身もまた世界が今までとは違って見えるのだった。夏休みのまぶしい日々は感覚を研ぎすませ、あたたかい夜は内省を促す。子どもでも大人でもないこの時期を、本作は、詩的なことばやイメージで表現する。成熟していくアデリは美しく生命力にあふれ、魅力的でとらえどころがない。だが同時に、思春期の少女であれば誰もが通る道を歩む彼女に、読者は親近感を覚えるだろう。

●作者ついて／ポーランドの詩人、文芸評論家、作家、パブリシスト。ポーランド作家協会賞受賞。国際短編小説祭でキュレーターを務める。2016 年、YA 向けの長編詩「誰にも非難されない」を発表し、児童文学界に衝撃を与える。以降、幅広い年齢の読者を対象に作品を発表している。