アイアンヘッド（ベルギー・読みもの・オランダ語）

IBBYオナーリスト2022_文学作品

『アイアンヘッド』

1808 年、ヘント。 型破りな少女、18 歳のスタンスは、父親の言いつけによって裕福な金貸しと結婚させられてしまう。自由を失い、自分の運命もこれで終わりのように感じていた。だがある夜、夫の服に着替えて逃げ出すことに成功し、そのままナポレオン軍に入隊する。そして、第14 中隊ほどくつろげる場所はないと感じる。しかし家族がスタンスを連れもどしに来て……。ジェンダーやアイデンティティーといった現代の課題を、説得力ある歴史的設定にうまく持ちこんで、物語は展開されていく。舞台となるヘント、パリ、ウィーン、ドナウ河畔の戦場が、豊かな言葉のなかで活写され、読者は血の匂いやビールの味、大砲の衝撃も感じるだろう。

●作家について／ 1963 年生まれ。作家、映画プロデューサー。翻訳で修士号を取得し、広報担当、レポーター、ジャーナリストとして働いた後、映画製作会社を設立。カンヌ国際映画祭批評家週間で受賞した『モスクワ、ベルギー』をはじめ、ベルギーで数多くの長編映画の脚本を書き、プロデュースしている。また、別の作家とコンビを組んで書いた「貴婦人」（2008）などの優れた歴史小説でも受賞歴がある。