少年（オーストラリア・絵本）

IBBYバリアフリー図書2021_ユニバーサルアクセス

『少年』

昔ある国で、王様と兵士たちが恐ろしいドラゴンと戦っていました。ドラゴンが彼らの森を破壊したからです。同じ国に、耳の聴こえない少年がいました。少年は、言葉を話す代わりに手話を使い、地面に絵を描きましたが、村の人たちには通じませんでした。
　ある日少年は、いつのまにか戦場のまん中に入りこんでいました。「あぶない！」という声が聴こえなかったのです。王様や兵士やドラゴンの視線に気づいた少年は、手話で話そうとしましたが、通じません。そこで地面に字を書きました。「どうして戦ってるの？」と。
　それぞれが戦いのきっかけを思い返してみると、王様たちとドラゴンのあいだには、誤解があったことがわかりました。
　水彩画風の美しいイラストとともに書かれた戦いの音やさけび声のオノマトペは、少年の世界がにぎやかなことを伝えています。最後は少年が投げかけた質問が平和をもたらし、少年は村人に歓迎されます。そして読者もまた、彼の世界を理解し、親しみを感じられるようになることでしょう。