ウィラム（オーストラリア・絵本・ヴォイワルン語）

IBBYオナーリスト2020_イラストレーション作品

『ウィラム—―ヤラ川のおはなし』

最初のページには、夜空に羽ばたくオナガイヌワシの姿。読者はこの鳥の視点で、ビクトリア州を流れるヤラ川の、水源から河口まで、そして先史時代から現代までをたどる。アクリル絵の具を使い、深い色合いのなかに明るい色をちりばめたり、曲線やさまざまな形のパターンを取り入れたりしながら、豊かな自然を写し出している。どのページにも多くの動植物が描かれており、読者は発見を楽しんだり語り合ったりすることができる。本書には、先住民である作者の「ここに描かれたすべての生きものは、ヤラ川に支えられている。この川はウィラム（ふるさと）なのだ」というメッセージが込められている。

＊画家について　タスマニア島の部族の子孫。メルボルンに生まれ、近くを流れる川が自然破壊から徐々に再生していく様子を見ながら育った。場所そのものに思いを寄せることで、その土地、水、生きもの、そして祖先とのつながりを感じるという。2016年発表の絵本「この国へようこそ」は、2017年児童文学自然環境賞を受賞するなど、高く評価された。