【報告】JBBY希望プロジェクト・沖縄で出張WSを行いました

 2025年度から2026年度にかけて、JBBY希望プロジェクトでは、沖縄、東京、北海道の施設を村中李衣さんが訪問し、出張ワークショップを実施します。*CBGMこども財団助成事業

JBBY希望プロジェクト沖縄訪問報告 2026.2.14~2.16

2月14日(土)

時間14時半~16時
場所糸満市福祉プラザすこやか館 2階 保育室(沖縄県糸満市)
対象いっぽの回でつながり支援をしている女性とその家族(ピアサポート)
Aさん+子ども1 Bさん+子ども1 Cさん+子ども3 Dさん+子ども1 Eさん+子ども3 Fさん Gさん

 それぞれの女性が抱えている問題と生き難さ、そこへのこれまでの関わりの経過と、子どもたちが直面している問題について事前に説明を受け、注意点と今回の目標を確認してからスタートした。

 準備してきたJBBYブックガイド「あしたの本だな」から選定した絵本30冊の内容紹介をクイズ形式にしながら楽しく進めていき、少しずつ親子が協力し合って読みあいを展開できる経験を重ねた。その後、それぞれが、自由に手に取って気に入った絵本を見る時間を設けた。最後に全員で『まるまるまるの本』を読みあい、個別に表現ワークを行って終了。

 いつもは、母と子のコミュニケーションがうまく取れず、親は疲れているし、子どもは落ち着かずバラバラで遊んでいるとのことだったが、同じものがたりの中を、ゆったり心遊ばせること、そして、それにつなげて表現活動(子ガメと親ガメのコウラのデザインをする)ことで、お互いを認め合い、声を掛け合う時間が保たれた。

    さらに、苦しみを抱える親同士の交流は、なかなかサポートが難しいということであったが、今回のように共に「子ども心」に戻って、笑い合う瞬間を重ねることが、ごく自然に互いを認め合うきっかけになることも、体験できたように思う。それもこれも、やはり、本がごく自然に周りにあること、取り立てて読書という形態をとらなくても、いつでも物語の森に逃げこめる雰囲気作りがあることが大前提である。JBBYの希望プロジェクトの重要性は間違いのないものであった。

16時~17時
ノアーズ・ピアサポートメンバーと反省会及び質疑応答

 入所児童の複雑な家庭背景や心理的な治療課題も含め、そこに踏み込まずに彼らの生きる意欲や自己肯定感を高めていくことに、物語がどこまで関われるのかを、真剣に話し合った。「表現ワーク」はその一つの橋渡しとなることを参加者全員が認識できたようである。


2月15日(日)

時間9時半~11時半
場所児童心理治療施設ノアーズ・ガーデン(沖縄県糸満市)
対象入所児童20名(小・中・高校生)+職員・教員

 まず、本とのかかわりを持つようになったいきさつを語ることからはじめ、自由で安全な対話の雰囲気を作ってから、「あしたの本だな」の30冊を、小学校高学年から中・高生の関心に繋がるように紹介していった。そのあと、20分程度、自由な読みの時間を設けた。

 その際、いくつかの「本の中に隠れている掘り出しトピック」を設定しておいて、ややゲーム感覚を取り入れた。この読みあいの時間に、ごく自然に、友だち同士の会話や認め合いの姿が生まれた。読みあい終了後、表現ワークの一つとして、先生を巻き込んで詩の創作を行う。これが非常に和やかな輪を生み、最後に一人1冊ずつ、図書室に入れてほしい本に付箋をつけて、寄贈の15冊を決定した。日頃見られない表情や姿を見られたと先生方も驚かれていた。


2月16日(月)

時間10時半~11時半
場所 糸満市福祉プラザすこやか館 2階 保育室(沖縄県糸満市)
対象中学生4名、小学生2名、保護者、職員、サポーター

 事前のカンファレンスで階段の上まで上がってこれない子どもや、会話が難しくすぐに泣き出してしまうというような精神的な苦しさを抱える子どもたちとその保護者への読みあいの会だと説明を受ける。ひとりずつの個別サポートが必要であろうと予測されたが、「あしたの本だな」の30冊を参加型で少しずつ紹介しながら、ひとりずつの表現ワークを取り入れていった。絵を描くという行為を、自分の物語とつなげることで、心が解放されていく姿が印象的。見学しておられた支援者の方々も、新しい本との出会い方があることを知ったと可能性を感じておられた。最後にもう一度、自分の気に入った1冊を時間まで楽しんだ。日ごろは仲間の近くに寄ることを拒否する子どもも拒むことなく参加でき、和やかでゆったりした雰囲気の中で終了。

11時45分~14時
いっぽの会メンバー及び活動支援者との意見交換会

 3日間を通してサポートと見学に参加した方々+こども未来課課長・係長が加わり、活発な質疑応答が交わされた。支援者の方々も今回日ごろはあまり目にしないタイプの絵本の、意外な「対話力」に、選書の目線を新たにされていたようである。


訪問と実践を終えて

 やはり、こうした厳しい状況にある子どもたちに、物語のある場は「安心できる場所」であることを伝えることは、とてもだいじなことだと痛感した。

 ひとりでいても孤独ではない場所、逆に大勢の中に在ってもひとりのこころを保てる場所であることを信じてもらえるように、やわらかなきっかけをつくることを考えなければいけない気がする。にも拘らず、そういうきっかけづくりが無視されている教育現場のなんと多いことかも改めて思った。そういう意味で、今回のような企画の中で特に力を発揮したのは、そのままストーリーを紹介するのでなく、彼らの日常をくすぐるような「いつもと異なる」本の世界への誘い方であった。ピクトさんの本やツリーハウスの本、動物たちの脱力系の写真絵本等は、非常に有効であった。そこから始まり、最後に読み物へ手が伸びていった子どもたちも複数いた。

(報告:村中李衣)