いままで言えなかったこと、ぜんぶ（オーストラリア・読みもの）

IBBYバリアフリー図書2021_ポートレイト

『いままで言えなかったこと、ぜんぶ』

11 歳の少女エイヴァはレット症候群のため、体を自由に動かせず、話すこともできず、自分の意思を伝えられません。わめいたり、奇妙な動きをしたりする自分のせいで姉も悩んでいると知り、エイヴァはみじめな気持ちになります。そんなある日、父親が脳出血で入院し、生活が一変しました。作業療法士との出会いや、施設でのショートステイを経験したエイヴァは、自分の新しい可能性を見出します。
　著者サマンサ・ホイーラーは、レット症候群の娘を育てた経験をもとに、本書を執筆しました。一人称の語りから、エイヴァの人柄や、周囲に理解してもらえないはがゆさが、ひしひしと伝わってくる作品です。家族が抱える複雑な思い、支援制度上の壁とそれに対する活動も見事に描いています。視線の動きに注目して開発された新しい技術が、障害をもつ人の意思疎通、コミュニケーションを助け、独立心を育むことも教えてくれます。