走れ、クル！（スペイン・読みもの・バスク語）

IBBYオナーリスト2020_文学作品

『走れ、クル！』

地中海には、水よりも多くの物語がある。クルという名前の少年が、険しい旅の末にようやく地中海を渡り、たどり着いたヨーロッパの病院で体を休めていた。ちょうどカーニバルの季節で、キリンの仮装をした、けがをした少女に出会ったクルは、辛すぎる自分の話の代わりに、地中海を渡ったキリンのサラファの物語を少女に話して聞かせる。サラファは、1827年にエジプトの総督からフランス王に贈られた赤ちゃんキリンだ。人生の甘さと苦さが見事に組み合わさった、リアリスティックで繊細な語りが、読者の心をとらえる。

＊作家について　1964年、バスク地方生まれ、ビトリア在住。バスク文献学を学ぶ。2008年IBBYオナーリストに選ばれた「金色の鍵」（2005）、「秘密にして」、「パウラとの七夜」（2002）などの作品にはバスクの伝統が色濃く見られる。「ウソア」（1999）や「シア・テンシンのすばらしい旅」（2009）では、多様な旅や移民を描く。フランス語からバスク語への翻訳も手がけ、「星の王子さま」（2001）は2004年IBBYオナーリスト・翻訳作品部門に選出された。