オラフの水たまり（スペイン・絵本）

2019_理解を深める本

『オラフの水たまり』

　あたたかくやわらかな雰囲気のイラストレーションが、ダウン症の男の子オラフの心のやさしさを伝える絵本。いじめや仲間外れなど、障害にまつわる否定的な事柄に注目するのでなく、むしろ、すべての人間は同じことを、例えば愛し愛されることや、他者と思いやりのある関係を持つことを望んでいるのだと伝えています。オラフは、有名な映画にでてくる雪だるまと同じ名前ですが、雪でできたあの子とはちがいます。読者は物語を通して、オラフもみんなと同じように、水たまりに飛び込んだり、誕生日を祝ったりするのが大好きな普通の男の子だと気づくでしょう。
　オラフの障害は、はっきりわかるようには描かれていません。作者は、これこそが、彼に対するいちばんふさわしい描き方だと考えているようです。オラフの祖父母をはじめ登場人物たちのリアルで豊かな表情は、お話のテーマである、人間のやさしさと生きることへの肯定感をしっかりと物語っています。