おはなを あげる（カナダ・絵本）

バリアフリー2017_共にたのしめる本
2018_イラストレーション作品（文字なし）

『おはなを あげる』

都会を舞台にした文字のない絵本で、父親と散歩する少女が草花を摘んでいくようすが描かれています。少女は摘んだ花を、仲良しの犬やベンチに座っているホームレス、道端で死んでいる小鳥にプレゼントします。少女の行いのおかげで、世界はそれまでよりも美しい場所へと変化していきます。花を渡す少女も、渡される相手も、その出会いによって変わるからです。本作では、色がとても効果的に使用されています。灰色におおわれた都会の風景のなかで、少女の赤いフードと花に色がつけられているため、読者にストーリーの焦点が伝わりやすくなっています。少女が散歩を終えるころ、世界は色鮮やかな世界へと変わっています。子どもが変化をもたらす能力は、瞬く間のささやかなことであっても、幅広い多くの読者の心に訴えかけることでしょう。魅力的なイラストと文字のないこの絵本は、だれもが楽しめる作品です。

画家について　ノバスコシア州生まれ。現在はトロント在住。幼い頃から絵を描き、ノバスコシア美術デザイン大学卒業後、多くの児童書のイラストレーションを手がける。作品にジョアン・シュウォーツ文の『うみべのまちで』（いわじょうよしひと 訳/BL出版/2017）、ミシェル・クエヴァス文の『スムート　かたやぶりなかげのおはなし』（岩城義人 訳/BL出版/2018）などがある。カナダ総督文学賞やリリアン・シェパード記念優秀イラストレーション賞など多くの賞を受賞している。