言葉の中の歩き方（アメリカ・絵本）

IBBYバリアフリー図書2023_障害が描かれた本

『言葉の中の歩き方』

もしも言葉が、目の前にそびえる壁や森のように思えたら？　本書は著者の実体験にもとづいて書かれています。周りの子はどんどん読みが上達するのに、自分は言葉に圧倒されるばかり。そこで物語が好きな著者は自分でお話を作りはじめます。最初は絵だけでしたが、少しずつ言葉を加えていきました。著者は自分が言葉や文章をどう感じていたかをイラストに表しているので、読みに困難を感じる読者は共感することでしょう。それ以外の読者にはディスレクシアの人の気持ちを教えてくれます。
　一語一語を読み取って理解したり文字として書いたりするプロセスには、多くの子どもが苦労します。読み書き指導では、お話を理解すること、評価や予想をすること、読書自体を楽しむことの重要性がときとして見落とされます。著者は自分が言葉の意味を理解できるようになった過程を示しながら、自分のペースで読んでいいのだと伝えています。あとがきでは「わたしの物語が、同じ傷をもつ人の心を癒し、読みを学ぶ若い読者たちを勇気づけることを願う」と述べています。