【IBBYバリアフリー児童図書】2019年セレクションに選ばれた日本の本

 IBBY(国際児童図書評議会)では、障害のある子どもたちも豊かな読書体験ができるよう、世界中の工夫のつまった本を収集しています。2年に一度、特に顕著な本約50冊を選び出しカタログを制作します。この度、2019年のセレクションに、日本の絵本3冊が選ばれました。

2019年IBBYバリアフリー児童図書セレクションに選ばれた「モグモグぱっくん」(てのひらの会)

布の絵本『モグモグぱっくん』
制作:てのひらの会、2008年

 さる かえる ぺりかん うし かば くじら・・ 愛嬌のある顔が、ページをめくると現れます。口は、ジッパーで開閉できるようになっていて、開けると、口の中にはそれぞれの動物の大好物が入っています。たとえばサルはバナナ、うしは草。「食べる」という行為は、生活に密着したテーマで、幼い子どもたちは、ままごと遊びの初期の頃から、「食べさせる」行為を楽しみます。この布の絵本は、手先を動かしながら、子ども自身がストーリーを作って楽しめます。ある子どもは、わざと好物でない食べものを口に入れて、「ちゃんと食べなきゃ大きくなれませんよ!」と、お母さんのようにいいきかせていました。障害のある子どもも、そうでない子どもも一緒に楽しめる絵本です。この絵本を作った「てのひらの会」は、1981年から、子どもたちに、見る楽しさ、体験する喜びを伝えたいと願って、布製の絵本の制作を続けています。

2019年IBBYバリアフリー児童図書セレクションに選ばれた「このあいだになにがあった?」(福音館書店)

『このあいだに なにがあった?』 
作:佐藤雅彦+ユーフラテス、福音館書店 2018年

 幅広い読者の知的好奇心を刺激し、推理する面白さと楽しさを味わえる写真絵本です。見開きのページが縦に3分割されていて、左にBeforeの写真が、右にAfterの写真があり、まん中に、「このあいだになにがあったの?」の問いがある。次のページには、まん中の部分に、そのあいだに起きたことがわかる写真が出てきます。たとえば、「毛がもこもこの羊」と「短い毛の羊」の写真の間には「羊の毛を刈っている写真」があるといった具合です。こほかに、「オタマジャクシ」から「かえる」、「ひっくり返った亀」から「起き上がっている亀」など、全部で8種類。並んだ2枚の写真から、間に起こった出来事を推理するようになっています。巻末には答えがついています。

2019年IBBYバリアフリー児童図書セレクションに選ばれた「夏がきた」(あすなろ書房)

『夏がきた』
作:羽尻利門、あすなろ書房、2017年 

 日本でも失われかけている作者の住む海辺の里山の美しい夏。空はまさにスカイブルーに白い入道雲。田んぼの緑。色鮮やかな絵の中には、たくさんの仕掛けられた楽しみがある。ストーリー展開も登場人物の関係性も、文章よりむしろ絵で表現されている。中の一つの絵、例えば「あーそーぼー」とやってくる青と白のしましまのTシャツを着ためがねの男の子、あるいは薄茶色の猫をおいかけて、ページをめくっていくと、そこにはちゃんとつながったストーリーがある。描き込まれた絵には見るたびに発見があり、カバーにはタイトル「なつがきた」の文字が隠されていたりする。テキストは大変シンプルで、文章だけを目を閉じて聴いていても、日差しのじりじりした暑さや 蝉の声や風鈴の音 海の匂いや花火の匂い、麦茶の味など、それぞれの夏が体感されてくる。日本の夏の「音」が文字にもなり、絵もたくさんの音や匂いや味を描いている。それぞれが自分の夏を感じ、思い出しながら楽しめる。

 IBBYの2019年セレクションは、2019年4月のボローニャ・ブックフェアのIBBYスタンドでお披露目され、その後、希望する国で展示されます。日本では、2020年3月から「世界のバリアフリー児童図書展」として、国内巡回を開始する予定です。お楽しみに。